水琴窟といえば「きれいな音がでる装置」ことは知っていても詳しくは知らないという人が多いようなので、 少しご紹介してみたいと思います。
水琴窟は手水鉢の近くなどの地中に空洞を作り、その中に縦穴を通じて水滴を落下させ、 空洞の底に溜まった水に落ちた水滴の音を反響させる仕掛けです。 縦穴を通して外に漏れ出る音が琴の音色のように聞こえることから「水琴窟」と名付けられたのだそうです。
水琴窟が奏でる残響音は約1~2秒間。
この長さは人にとって最も快く聞こえる長さだそうですよ。 澄んだ金属音のようにも聞こえる、なんとも美しくやわらかい、自然な音に癒されます。
水琴窟は安土桃山時代から江戸時代の前期に茶人、建築家、 作庭家として活躍した備中松山藩主・小堀遠州が提案した排水装置を起源とすると言われています。
…が、起源についてのはっきりした詳細は不明。
江戸時代から風流人が好み、茶室や町家の坪庭などに設置されてきました。
明治から大正、昭和初期を経て、戦後は全く忘れられた存在となってしまっていましたが、 1980年代から少しずつ見直され広く知られるようになったそうです。
水と空洞というシンプル極まりないシステムで音を発生させるからこそ、奥深いノウハウがあり、 理想の音色を追求する魅力があるのも特徴です。
空洞の底に溜まった水が深ければ「静かで深みのある音」が、浅ければ「賑やかで軽い音」に。 空洞の形にも釣鐘型、銅壺形、龕灯形などがあり、底水の量、水滴が落ちる速さ、水滴の大きさ、 それぞれが相関し合うことで音色が変わるので数寄者たちは競って工夫を凝らしたとか。
美しい音色を奏でる最適な水量を保つため、空洞の底には溜まり過ぎた水を排出する排水管が設けられます。
そこでふと思ったのは「雨水タンクのオーバーフロー機構と同じシステムじゃないか!」ということ。
水琴窟は音色を楽しむと同時に、降った雨を”貯めて・使って・返す”という水循環に貢献していたのですね。 伝統的な水琴窟は全国に広く残されていますが、とりわけ京都に残っているものが多いのだそうです。
約400年前に誕生し、数寄者や風流人が音色を楽しんでいた水琴窟。
時代の流れに押し流され消えていったものが風流を愛する人たちの手によって復活したというのはなんだかロマンティックでもありますね。
地中に穴を掘って空洞を作って…というと自作するのも少々大掛かりになりますが、 今では手軽に水琴窟の音色を楽しめるキットが販売されています。 お値段もサイズもピンからキリまで、デザインもいろいろと選べるようです。
そして水琴窟にはぜひ雨水を使って楽しみたいものですね。
ー適正な水循環に貢献しながら生活を彩るー
これぞ”雨水を取り入れた豊かな生活”の一例ですね。