東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた大船渡市の碁石地区。
街を再建するにあたり、今まで慣れ親しんできた場所から高台への移転を余儀なくされてしまいました。
震災以前の碁石地区では、広い庭で趣味のガーデニングや家庭菜園を楽しんでいた家が多く、水遣りの水には主に井戸水を使っていたそうです。
移転先の高台の地盤は掘削が困難な固い岩で、井戸を掘るのも困難。
ガーデニングはしたいけれど井戸を掘るのには高いコストがかかるし、わざわざ水道水で水遣りするのはもったいない、などの理由で趣味を諦めかけていたそうです。
でも何もしないのはさみしい…という住民の声を受け、“碁石地区まちづくり協議会”から出てきたのが「雨水タンクを使ってみたらどうだろう?」というアイデア。
そして碁石地区まちづくり協議会の相談を受け、日本建築学会、雨水貯留浸透技術協会、 雨水事業者の会が主体となって、雨水タンクメーカーの協力のもと 「碁石地区の住宅に雨水タンクを取り付けよう」というプロジェクトが始動することになりました。
そうはいっても、碁石地区まちづくり協議会のメンバーも実際に雨水タンクの現物を見たことがない、どのように使っていったらいかわからないという人がほとんど。
まずは使用目的と諸々の環境を考え、どのくらいのサイズの雨水タンクが必要なのか、メンテナンスはどうしていったらいいのか、どんな使い方ができるか、などの雨水活用の基本的から考えるワークショップを開催しました。
ワークショップの中では「地下に2tクラスの大きなタンクを埋設したらどうか」など、 いろんな意見が出ました。
諸々の協議を重ね、最終的には200L程度のタンクがいいだろうという結論に到達。
協賛してくださった各社メーカーさんのご協力のもと、さまざまなタンクが集まり、 2016年11月に9基の雨水タンクが設置されることとなりました。
設置を担当したプロジェクトメンバーが作業中に住人の方からお伺いした被災当時の状況では、 やはり多くの方々が“飲み水以外の水源確保の重要性”を痛感されていたそうです。
そういう“生”の声を聞くと、雨水活用を普及させる意義というものを再認識させられます。
雨を使いたい・生活の潤いに活かしたい・楽しさを取り戻したい。
新しい土地での生活を、雨水を活用して前向きに考えようとする碁石地区のみなさん。
そしてその想いに応えようを協力の手を差し伸べてくれる団体・企業がある。
それがとても素敵だと思います。