今は蛇口をひねれば水は簡単に出てくるし、しかも日本の上水道水はそのまま飲める高品質な水。
しかし、つい忘れてしまいそうになるけど。
水が豊かといわれる日本でも、そんなに昔じゃない時代まで良質な水を手に入れることが難しかったところはたくさんあったのです。
一番イメージしやすいのは島嶼部ですね。
海底パイプで上水道もしくは簡易水道が通るまで、井戸を掘っても海水が混じったり、そもそも真水の出ない島もありました。
そういうところでは雨水をとっても大切にしていたのです。
雨水を貯めるためには屋根に降る雨を樋で集めることが一般的ですが、樹木に降る雨を集める方法もありました。
木の幹に枝をさしかけて幹を伝ってきた雨を甕に集める方法は、自然を利用したとってもかしこい方法。
“樹間水”と呼ばれ、沖縄や伊豆諸島などの真水が得られにくい離島で行われていたといいます。
瀬戸内海沿岸の香川県・伊吹島では竹でできた樋を屋根に巡らし、雨水を“泉”と呼ばれる貯留槽にため、生活用水として利用していたといいます。
また沖縄の粟国島では、雨水を用途に分けて大きさの違う石をくり抜いて作った甕・“トージ”に貯め、大型は調理用、中型はお茶用、小型は豆腐の仕込み水や家畜用に使っていました。
離島じゃなくても、山奥すぎて上水道が普及するまでは山の湧き水を使っていた、もしくは今でも簡易水道しかないところもまだまだあります。
そういうところでは雨水を今でも大切に思っていて、当たり前のように利用していたりもするのですね。
いわゆる“ライフライン”というものをとかく他者に依存していて、それを忘れてしまいがちな現代社会。
何がなくともこれがなくては生きていけないともいわれるほど大切な水。
雨水を大切に使ってきた文化を過去の遺物として風化させてしまうのは全くもってもったいない。
雨水活用を“生きる知恵”として伝えたいし、実践していきたいと思うのです。