日本でも自然の力を利用して防災や水質浄化を図る施設の整備や土地活用をしようというグリーンインフラの概念が注目されてきています。
道路や屋上の緑化、遊水機能を備えた公園などがグリーンインフラの一例としてあげられますが、まだまだ広く知れ渡っている概念とは言い難く…
普及もこれからのような感じもしています。水と緑と生物という生態系で構成されるグリーンインフラは、雨水とも密接な関係がありますね。
日本は世界的に見ると全体的には水に恵まれている国ですが、水が不足していたり、逆に多すぎて、渇水や洪水などの災害となっている地域もあります。
グリーンインフラによる治水は日本にも必要なものであり、サスティナブルな社会をつくる上でも大切なのではないかなと思います。
海外には都市やコミュニティレベルでグリーンインフラを導入している先進地域がたくさんあります。
アメリカのニューヨークやポートランド、イギリスのロンドンなどの先進国はもちろん、ニカラグアなどの途上国にも例があるそうです。
日本では一つの構造物を主体にしたグレーインフラを整備してきましたが、都市・コミュニティレベルでのグリーンインフラをどう展開していくのか考える時代になってきていますね。
そんな中、グリーンインフラの先進国としてシンガポールが知られています。 世界で最も人口密度の高いシンガポールは、国内で必要とされる水の半分近くを隣国のマレーシアからパイプラインを通じて輸入しなければいけないほど水が不足している国です。
これまでも貯水池の建設や下水の再生処理などに積極的に取り組んできましたが、 シンガポール全域を対象とした水戦略「ABC(=Active、Beautiful、Clean)水のデザイン・ガイドライン」 に沿って、グリーンインフラを中心に水問題の解決に取り組んでいます。
その中で最大のプロジェクトが多機能型の都市型河川公園とし再整備されたビシャン・パークです。
全長3kmのコンクリート三面張りの排水路カラン川の川幅を従来の17~24mから最大100mまで拡幅し、自然型の河川に再生。
治水・排水の機能だけでなく、コミュニティーやレクリエーションの場として水や自然と親しみ、水と緑の大切さや魅力を体感できる場としたそうです。
もともとカラン川は熱帯気候に特有の大雨(スコール)による増水を防ぐため「できるだけ早く水を下流に流す」排水運河として造られたものでした。それを自然のシステムを活用しながら雨水管理を行えるようにしたのです。
緑に覆われた幅広い河川敷の中を緩やかな曲線を描いて流れる川の姿はとても自然で美しく、たくさんの人の憩いの場所ともなっているそうです。
ビシャン・パークの他にもガイドラインと連動した約100のグリーンインフラ・プロジェクトが2030年の完了を目標に進行しています。
自然をねじ曲げるのではなく、自然に寄り添って力を借りる。そういう考え方がこれからの社会に本当に必要とされているのではないかと思います。
今でも美しい国として有名なシンガポールが、さらにどんな進化を遂げるのか楽しみです。
※写真について
作者:Pagodashophouse